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シュレッダー事件

文 | 小出 香

昔々 まだセンターに紙があふれていた頃の話。

 

夕方6時過ぎ、たくさんのオペレーターさんが仕事を終えて帰っていく時間。

「ギャー」と叫び声が上がった。声の主はシュレッダーの前で固まっている。

 

駆け寄ると「すいみません、すみません」と繰り返す。

左手には使用済みメモ用紙の束。ということは右手でシュレッダーにかけたのは。。。

そう、記入済みの受注票。

 

曰く5~6枚。使用済みメモ用紙をシュレッダーにかけてから、受注票を提出して

帰ろうと思ったのだという。

 

受注時お客様には1週間前後で商品をお届けすると案内している。

その日の入電は約2000件。

 

さてどうしたものか。

 

この手でシュレッダーの電源を引っこ抜く。使用禁止の張り紙。

シュレッダー用の紙回収箱設置。社内に事故第一報。クライアントへ連絡と謝罪。

 

そして、古い録音装置から音声を拾い、システムに入力されているか確認する

作業を延々と続ける。時計の針はテッペンを回る。

 

その日の報告書を作り、メールを送る。翌日も翌々日も。あの日から5日間。

7時~夜12時まで作業を繰り返した。

 

録音を全数聴き終え、該当は6件、5日目に発見した最後の1件を

即日出荷して対応終了。今なら録音リストから全電番を引っ張って、

受注システムと照合すれば一発だと思うけど。

 

何が言いたいかっていうと、目的ひとつに行動1回。

これが事故防止に必要だってこと。

 

早く帰りたいから、使用済みメモ用紙をシュレッダーにかけることと、

受注票の提出を1回の行動でしようとした。

これが事故を招いた。

 

紙の受注票を使うことも少ない今ならこんな事故は起こりにくいと思う。

でも人間はミスをすることを前提にフローを設計すれば、事故のリスクを

減らせるっていうこと。

 

更に、システムで事故が起こりようもない状態を作って、オペレーターの

ミスに対する重圧を軽くすれば、きっともっと機嫌よく顧客対応できると思うのだ。