· 

拡散された携帯ショップの衝撃メモから

文 | 中野 みのりこ

 

某携帯キャリアの代理店での顧客対応がTwitterで拡散され

話題を集めている。

 

今朝の民放ワイドショーでも延々と時間を割き、コメンテー

ターが私見を述べるなどしてしっかりと取り上げられている

のを見かけたほどだ。

 

コールセンターと違ってカウンター越しの対面での対応だから

とも言えるが、社内向けのメモが誤って他の手続き関連書類と

一緒に顧客の目に触れてしまったという。

 

そのメモには

「親が支払いしてるから、お金に無トンチャク」

「つまりクソ野郎」

との衝撃の言葉が書いてあったというから驚きである。

 

メモを見てしまった顧客はすぐに責任者を呼び説明を求めたも

のの、「すみません」とヘラヘラとした態度で拉致があかなか

ったと報道されている。

少なくとも顧客にはそうとしか映らなかった事は事実であろう。

 

コールセンターでもよく起こる事象だ。

保留ボタンを失念したまま「うるせーな」やら「ク⚫ジジイ」

やらの暴言を吐いてマイクにしっかり拾われるアレだ。

 

通話相手は当然ご立腹となり、SVに通話交代するもさらに火に

油をそそぐご対応。

通話録音を聞いて気絶しそうになっているQA担当者が目に浮か

ぶようで、不謹慎ながら笑ってしまいそうになる。

 

さて、この携帯ショップでの衝撃メモを手にした顧客は、店舗で

埒(らち)があかなかったために、代理店でなく本社に対してご

不満のお申し出を希望されたものの、「コールセンターしかあり

ません」と説明されたと言う。

 

そう、こうしてコールセンターは企業の外濠(そとぼり)として

の機能を否が応でも担っていることがよくわかる象徴的な事例だ。

 

運悪くデビューしたての新人オペレーターがこの電話を取らなか

ったことを祈らずにはいられない。その上通話交代したSVがまた

「すいませーん」とヘラヘラした応対だったらと思うともう考え

たくない最悪の状態にまっしぐらである。

 

顧客の気持ちを考えると絶対に笑えない。

 

しかし、こうして苦情というものは発生するということが一つ

言えるし、何万という問い合わせを受けているであろう携帯キャ

リアのセンターでは、こういう「万が一」などは日常なのだ。

 

この件は結局、Twitterで拡散されて事態が大きくなってから、

やっと代理店からお詫びのメールが届いたという。

 

何事もなかったかのようにだんまりを決め込んでおいて、

収拾がつかなくなってから謝ってくることに、この顧客は納得

できなかったという趣旨の報道を見た。当然であろう。

 

しかし私が今回改めて驚いたのはここまでのあるある!という話

ではなく、ワイドショーでの論調が、どちらかというとこの店員

に同情的であったことのほうである。

 

メモの内容は当然許されるべきではないものの、職場環境として

は、案内するプランも複雑でストレスがたまりやすく、実際に働

いていた人にインタビューを行い、いかに業務が繁忙でありスト

レスがたまるか、今回の対応も理解できる、というコメントを、

普通に流していた。

 

コンビニが2020年元旦に休業した事は記憶に新しい。

そう今は、職場環境ということを世の中みんなが考えるように

なったのだ。

 

宅急便の値上げにも世の中は「ぜひそうして!」という好意的

反応であったように感じられたものだ。

店員に土下座させる顧客の動画が拡散されて炎上したりもした。

 

さて、「職場としてのコールセンター」の世の中での認知はどの

ようなものであろうか。

 

「職場」という言葉には何となくそこで立ち働く人のストーリー

を感じさせるようなニュアンスがないだろうか。

 

100万人規模の雇用を抱えると言われるコールセンター。

全てが定量データとしてはじき出されるコールセンターだから

こそ、職場として果たしてどうなのか、ということを世の中だけ

でなく、コールセンターをマネジメントする方たちにも、ぜひ

考えて欲しい。

 

そうでないと、コールセンターは世の中から取り残される可能性

はないだろうか。

 

大手のコールセンターが次々にオペレーターの育成プランを打ち

出しているのはとても嬉しい。

採用難からの囲い込み施策だとしてもだ。

この流れが続くよう祈っている。