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コールセンター はバッティングセンター?CMBOKノススメ

文 | 中野 みのりこ

CMBOKでは、顧客と直接接触してサービスを提供する従業員を

「コンタクト・パーソネル」と呼ぶ。

オペレーターやSVがこれに該当するのだが、このコンタクト・

パーソネルは、「今日はほどほどにして、明日がんばりまーす!」

ということはできない。

 

気持ちの上で今日より明日は気合いを入れる、明日はまた今日とは

気持ちを切り替えて頑張る、ということはもちろんできるのだが、

ここで言いたいことはそういうことではない。

 

「帳尻を合わせる」という言葉があるが、いわゆる間接部門で働く

人や、予算を達成することがミッションの営業職の方などは、明日

頑張って、その職務が与えられているミッションを月間などの期間

トータルで完遂することが事実上許されている。

もちろん、職場でサボって良いという意味ではないのだが、やるべき

ことを期限までに成し遂げればOKなのである。

 

しかし、コールセンターの顧客接点はそうはいかない。

 

特にインバウンドのカスタマーセンターなどは、電話の向こうのお客

さまを出来る限りお待たせせず、ましてや繋がらないなんてことが

ないようにコントロールを行う。

 

その為に「事前に」入電数を予測し、そこに30分単位で受電人数を

やはり「事前に」アサインしている。

 

にも関わらず。

「その日になって」当日欠勤。来ない。居ない。足りない。

 

なぜか申し合わせたように何人ものオペレーターが来ないなんてこと

はよくある。

人はなぜ月曜日などの休み明けに風邪をひき、腹痛を起こし、発熱する

のかと今こそ全ての日本国民に問いたい。

 

入った電話を取るという行動は、バッティングセンターによく似ている。

 

ともかく打ち返す必要がある。どんなに優秀なオペレーターも、出勤し

バッターボックスに立たなければそのミッションを果たせない。

今日は休んで明日打ち返すことなんかできないのだ。

 

ここがコールセンターの仕事の大きな特徴であるものの、もはや当たり前

過ぎて、意識化や言語化ができていないことがある。

「バッティングセンターっぽい」というのでは例え話の域を出ない。

 

電話やチャットに予測が必要なのは言葉で言うなら

「リアルタイムのチャネルだから」である。

バッティングセンターに例えられるのはそういう意味からである。

 

さらにここに、人件費などの財務的な観点を加えることがマネー

ジャーには必要となる。

 

ここがSVとマネージャーのコンピテンシーとして要求レベルが

大きく異なる部分である。CMBOKではレイヤーごとの明確な

レベル定義がなされている。

 

読めば当たり前の記述でしかないが、ここまでの文言に

落とし込むには、相当の理解と工数を要するはずだ。

 

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CMBOK2.0コンピテンシーの概要より以下引用(斜線部)

 

 経営戦略と財務(ST

 ST-3コンタクトセンターの財務

 

 SV:オペレーターなどの現場業務のパフォーマンスが、コンタクト

          センターの財務にどのような影響があるか、日常の活動レベル

          での基本的な知識を持っている(コンピテンシーレベル1)

 

 OMP : ●コンタクトセンターの財務に影響のある業務について、その

             設計・運用・改善ができる

            ●利害関係者との契約形態に基づき、財務的なインパクトを計算し、

    収支の改善のために、必要な施策及び適切なリソースの配分を実施できる

    (コンピテンシーレベル3)

 

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一般にコールセンターはコスト削減と効率的な運営を要求

されると同時に、顧客満足度の向上を要求される。

両者はトレードオフの関係ではなく、両立できるものだ。

 

マネージャーは、このトレードオフではない関係性をSVにわかり

やすく自分の言葉で説明できるかを考えて欲しい。

 

インハウスのコールセンターではマネージャーでも財務に関わら

ないケースも多いが、ここがわかるとコールセンターのマネジ

メントがグッと面白くなるし、経営陣に対しても予算の確保や

施策立案に際しての説明がつく領域が大いに広がる。

 

コールセンターの当たり前を要素に分解して定義明文化し、

言語化しているのがCMBOK

 

あなたのセンターで何が起きているかを、SV、マネージャーなど、

レイヤーごとに求められる観点で明確に言語化し、組織の共通認識

を作り上げるためにCMBOKは最適なガイドブックであり、明日の

ミーティング時間数を大幅に減らせる可能性がある。

 

CMBOKはペラペラめくっても面白くないのだが、何か問題が起きた

時に開くと、実はとてもわかりやすい。

書棚に眠っているCMBOKがあるなら是非開いて欲しいし、まだ購入

していないなら、ぜひ1冊購入してみてほしい。

 

経営陣を説得できなかったら、CMBOKに言わせればよい。

それがCMBOKの便利な使いかた。

実務が大事、でも理論武装も時には必要。

 

コールセンターのマネジメントは、

「叩き上げのマネージャーはわかっていても説明できない」

「異動してきたマネージャーには理解できない」

などと言われがちだ。

CMBOKはあなたを助けるツールになる、

ことがきっとある。

 

 

 

◾️CMBOK用語解説

 

OMP:オペレーション・マネジメント・プロフェッショナル(マネジメント専門職。コールセンター 長をはじめとするオペレーションマネジメントの一部、もしくは全てに携わる)

 

ST:コンタクトセンター戦略 ストラテジーの略語

 

コンピテンシー:高い業績を保つ人材の行動特性を明確にしたもの。(CMBOKでは階層ごとのコンピテンシーを専門性の習得度合いで以下のようにレベルを定義している)

  レベル1:専門性の実践度「理解」

  レベル2:専門性の実践度「実践」

  レベル3:専門性の実践度「改善」

  レベル4:専門性の実践度「指導