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秀逸かつ脱力の復唱 episode2

文|中野みのりこ

さあ、episode1に続きコールセンター で起こった秀逸かつ脱力の

 

復唱エピソードをご紹介します。

 

 

 

私が教えて頂いた貴重な作品は、自動車保険のコンタクトセンターでの

 

自動車のナンバープレートの復唱でのエピソードです。

 

 

 

 「『盗っ人(ぬすっと)のヌ』で お間違えないでしょうか?」

 

 

 

こらこら、盗難を想像させるような言葉のチョイスをするでない。

 

なんたって自動車保険のコールセンター。縁起でもない。

 

 

 

お客さまが「はい、盗っ人のヌで間違いありません。」とお答えになられたの

 

かもしれないと思うと、切なすぎて泣けてきます。

 

 

 

 

 

そのうえ、表現があまりにも江戸っ子すぎやしないでしょうか。

 

21世紀になって久しい現代で「ぬすっと」とはこれいかに。

 

 

 

あんたは鬼平犯科帳、火付盗賊改方(ひつけとうぞくあらためかた)か!

 

と、若い人に理解不能なツッコミを入れたくなります。

 

 

 

「盗難は御法度!」などと案内していたら、一体どのような指導を

 

すればいいのかと老婆心ながらあれこれ心配になるというもの。

 

 

 

 

 

「しからばご御免」と切電する可能性はかなり低いにせよ、実際に私は

 

「左様でございますか」を誤って「左様か。」と謎のショートカットで

 

言い放ってしまった苦い経験があります。

 

 

 

まあこれは「言い間違い」のカテゴリ。

 

余裕がないと、口が勝手におかしなことを言うことだってあります。

 

 

 

少々論点がずれますが、「『左様』の意味を言ってみろ!お前は理解して

 

使っているのか!!」とお客様からお叱りを受けたことがあります。

 

言葉って難しいですね。

 

 

 

 

 

話を戻しましょう。

 

 

 

 

 

そもそも「ぬ」の復唱はなかなか適当な言い換えバリエーションが少ない

 

方に属する文字です。

 

 

 

「塗り絵のぬ」あたりが、まあ妥当な線であるような印象はあります。

 

あなたのセンターではどのように言い換えていますか?

 

 

 

「布(ぬの)のぬ」や「沼(ぬま)のぬ」は少々聞き取りにくさを伴う

 

音であるし、2文字だと短くて余計に聞き取りにくい可能性があります。

 

 

 

 

 

私がSVをしていた頃、

 

 

 

「ぬか漬けのぬ」

 

「縫い代(ぬいしろ)のぬ」「縫い目のぬ」

 

「ヌードルのぬ」

 

 

 

など、各自が工夫を凝らし、オリジナリティを出そうとそればするほど私に

 

ちょいと叱られるという組織構造があったことも懐かしく思い出されます。

 

 

 

単調になりがちなコールセンター の業務。日常業務のなかに変化を

 

つけたい気持ちは大切だし、よく理解できます。

 

 

 

しかしお客さまに対しては、プロとして、語感や言葉の持つ意味、扱う

 

サービスや商品の内容との整合性も考慮してチョイスすることは必須の

 

スキルではありますね。

 

 

 

 

 

優秀だった私の同僚は「知るに生きるで知生(ともき)さまですね」と言う

 

べき場面で、「死ぬに生きる」と口が言ってしまった!というエピソードを

 

もっています。

 

 

 

この通話では、お客様とのラポールが充分に築けていたため、電話の向こうと

 

こちらとで、一緒に笑い合うという理想の落としどころだったそう。

 

 

 

通話の中での関係性がしっかりできてさえいれば、多少のことは許して

 

いただけたり、逆に関係性が深まったりすることだってあるのです。

 

  

 

 

 

秀逸な復唱、言い間違いなどがあったらぜひ情報をお送りください。

 

お待ちしております!

 

 

 

(文中では実際の人物名とは表現を変えて記載しています)